少子化は今に始まった事ではなく現在の五十代の世代からその傾向があるのではないでしょうか。
戦後のベビーブームで生まれた世代は兄弟も多く、家庭では三世代が当たり前に同居して賑やかに生活をし、地域では互いに助け合い、人情味あふれる共同体がたくさんありました。
その当時の葬儀といえば、お寺や地域の集会所が主体で多くの親戚や近所の方、そして友人知人が参列されました。
本堂での悲しみとは裏腹に厨房では地域の女性方が慌ただしく、また賑やかにお煮しめやおにぎりなどの食事を手作りされ、その味は格別なものでした。
きれいな電飾や水車がぐるぐると回る華やかな祭壇を前に、長時間の正座でしびれた足をどうしたらいいものかとお寺さんのお説教どころではありません。親戚が大勢集まり、大人たちは夜明けまで酒を飲んで故人との別れを惜しんでいました。線香番は祭壇のお線香が絶えないように気を配り、それぞれが役割の中で葬儀が営まれていました。
現在の葬儀といえば、葬斎場でで行われるのが一般的です。
そして、今まで地域の方が不慣れながらもやってきた通夜葬儀での役割をプロの方に任せ、流れるような手順で滞りなく葬儀が行われます。
時代の流れに合わせたものですが、変わったのはそれだけではなく参列者の数にも変化が見られます。
葬儀は相互扶助の観点から、香典で葬儀費用をまかなうことを前提としていましたが、家族葬では参列者が少なく、香典ではまかなえません。
家族葬が近年増えてきた背景には、少子高齢化、核家族化があります。そして合理化による葬儀費用の増大が葬儀の形を変えたのでしょう。
今まで家族葬の定義があいまいで、家族葬と言いながら近所の方や知人も参列し50人を超えることもありました。
この度の新型コロナウイルス感染症拡大により、家族、親戚以外の参列を避け文字通りの『家族葬』が定着しつつあります。